第4章 ‐case2‐endnig.
シチュエーションとしては、学校の人気がない場所で、こっそり渡す…とかが、龍くんの好きな感じだろう。
だけど、残念な事に完全部外者の私が学校に入る訳にはいかない。
下手をしたら、不審者として捕まってしまう。
それに、何より。
夕くんには、用意していないから、バレたくなかった。
だから、冴子ちゃん協力の元、田中家で龍くんの帰りを待っている。
「ただいまー!」
「お邪魔しまーすっ!」
帰ってきた龍くんの声の後に続いたのは、間違いなく夕くんの声だった。
待ちに待っていた筈の、その瞬間は、とても都合の悪い展開を連れてきている。
「あっ!さくらさーんっ!久し振りっすね!」
部屋の中で、私を見付けた途端に目の前まで来るのは夕くんで。
咄嗟に、チョコレートが入っている鞄を隠した。
「夕ー!冴子姐さんが、チョコやるよ。ちょっとこっち来な!」
私の目的を知っている冴子ちゃんが、上手く夕くんと外に出ようとしてくれたけど。
「姐さん、有難いっすけど、漢、西谷夕!欲しいのは、さくらさんからのチョコだけっす!」
夕くんは動かないどころか、私に催促までしてくる。
「いいからこっち来い!男なら、少しは空気読め!」
それでも、強引に夕くんを捕まえて、冴子ちゃんが出ていってくれた。