第2章 ‐case1‐ending.
黒尾さんは、何気無く気遣いしてくれる方だ。
だから、付き合っているか微妙なラインの私と乗るなら、普通のゴンドラの方だと思っていた。
それが、まさかのカップルシートを選択されていて。
体が触れ合ってしまう狭いスペースで、横並びに座る事になってしまった。
扉が係員の手によって閉められて、2人きりの空間になる。
横並びなら、顔を見なくてもいいから話しやすくて、好都合だ。
眼を見て答える事が出来なくても、電話じゃなくて、直接本人に言えるなら、私も少しは成長してる。
前向きに考える事にして、深呼吸で話す準備をした。
「…なぁ。」
落ち着こうと努力しているのに、声が聞こえて肩が跳ねる。
心臓が今までに無いくらい早く動いていた。
「今日、楽しかったか?」
緊張を解くような、優しい音。
多分、黒尾さんは私が何を思って観覧車に乗りたがったか分かっていて。
それで、落ち着かない状態なのも気付いていて。
違う話題を振る事で、今は無理をしなくていいと、伝えてくれている。
この優しさに甘えたいけど、逃げたくない。
だから、今は甘えない。
「楽しかったです。」
「そ?」
「またデートしたいです。…だから、返事…今、しても、良いですか?」
告白はされた。
私の気持ちが、黒尾さんに向いている事も、王子様を否定しない事で伝わっている。
だけど、明確な返事をしてなかったから、付き合ってはいない、曖昧な関係。
それを変える為に、勇気を振り絞って、言葉に出した。