第2章 ‐case1‐ending.
幾つかの乗り物に乗り、楽しんで過ごしている内に、時刻はお昼頃。
食事をしようと、フードコートのある施設に入った。
「小熊、席取り頼めるか?何食いたい?俺が買ってくっから。」
空いた席を顎で示した黒尾さんの目から、一瞬だけ笑顔が消える。
この前、待たされている間に逃げた事を根に持っているんだろうか。
「…なんか、ごめんなさい。」
「何謝ってんだよ?」
「この前、フードコートで逃げたの、根に持っているのかと…。」
「違ぇよ。お前の事だから財布出して、これで買ってきてとか言いそうだったからだよ。」
ついつい謝ってみたけど、黒尾さんが気にしていたのは違う部分だった。
確かに、私がやりそうな行動ではある。
でも、黒尾さんは金銭を求めて傍に居ようとしてくれる訳じゃないのは分かっているから、首を振って否定した。
「やらないですよ。…代わりに後で飲み物か何かご馳走しますね。」
「お。イイ女の行動分かってんだな。出すっつってる男は立てといて、別のトコで小さいモンでも返してくれりゃ、いーんだよ。」
黒尾さんの手が、私の髪の毛を荒らす。
とてもご機嫌みたいだ。
ずっと、お金に頼って、人の時間を買おうとしていた。
それが通用しない場合、どうすれば正解かは分からなかった。
だから、奢ってくれる男の人に、お返しをする方法は調べておいたんだ。
ネットで拾った情報だったから、正しいのかは分からないけど、黒尾さんには合っていたようだった。