第2章 ‐case1‐ending.
今日は、黒尾さんと本当の初デートの日だ。
やっと、私達の関係をはっきりとさせる日が来た訳だ。
実は、悪いと思いながらも京ちゃんに、この事は相談していて。
電話の時に、わざと京ちゃんの名前を出しまくって、嫉妬でもさせておけば、答えを求めてくれるだろうって作戦だった。
私から、逆に告白したい訳じゃなくて、黒尾さんの告白に応える形にしたい。
それは、保留したものを、そのままにしないという、私なりのケジメである。
今日こそ、ちゃんと伝えるんだ。
そう意気込んで向かった待ち合わせ場所。
黒尾さんは、先に来ていたようで、何やら女の人と話をしていた。
ニコニコと、愛想の良さそうな笑い方をしている。
その女性は美人で、背も高くて、モデルさんみたいで、自分に自信があるんだろう事が見ただけで分かった。
逆ナンパでも、されているんだろうか。
黒尾さんが手を振って断るような仕草をした後、去っていく姿すら、颯爽としていて綺麗な女性だった。
それに比べて、私は…。
急激に色々なものが萎えて、近付く事が出来ない。
あんなに綺麗な人からも誘われるような人が、本当に私なんか好きなんだろうか。
「小熊、お前、来てんなら声掛けろって。」
落ち込んでいく思考を引き上げる声が聞こえる。
顔は平凡で、背も低くて、普通のど真ん中みたいな私を、ちゃんと見付けてくれる。
黒尾さんが、今まで私にしてくれた事とか、言ってくれた事とか。
全ての行動を、信じようと思った。