第2章 ‐case1‐ending.
‐黒尾side‐
恋とは、病だ。
コイツが、どんな顔してても可愛く見える。
可愛すぎて、からかい倒してぇ欲に駆られた。
軽く尖った唇を指先で摘む。
抗議するように向けられた目。
視線の意味は分からないフリをして見詰め返すと、すぐにまた逸らされた。
「ホンット、お前、可愛スギ。」
言葉での抗議も聞きたくて、唇を解放する。
恥ずかしそうに顔ごと違う方向に向けられて、声は聞けない。
こりゃ、真面目にデートの話しようとしても、話になんねぇな。
今以上に恥ずかしがられたら、会話が出来る気しねぇよ。
「…俺、電車の時間もあっから、そろそろ行くな?帰ったら電話するわ。また、後でな。」
顔が見えなきゃ、少しは話せんだろ。
そんな願いを込めて、言葉を置いていく。
「あっ、えっと!きょ、今日は、あり、がとう…ございました!
また、後で。電話、待ってますね!」
背中を向けると、緊張してんのが分かる途切れがちな言葉が発される。
今は無理そうだと諦めた小熊の生の音声が、とんでもなく嬉しくて。
すっかり彼女にハマりきってる事だけ自覚した。