第1章 三角形 case1
この後も、縁日コーナーでは、私が落ち込む事ばかりが起きる。
何をやろうとしても、支払い用のリストバンドは、どちらかが差し出してしまうし。
私が失敗したものを、悉く2人が成功させていた。
お陰で悔しくなるばかりだったから、早々に縁日コーナーからは退散。
気晴らしがてら、中庭のような所に移動する。
そこは日本庭園になっていて、綺麗な景色に、落ち込んでいた気持ちは晴れてしまった。
つくづく、自分は単純だと思う。
足湯が道になっていて、歩けるようだったから、そこに入った。
底には、丸い石が敷き詰められていて、少しだけ歩き辛い。
「さくら、手。」
「え?なんで?」
「転んで怪我されたら、俺が困るから。」
京ちゃんに手を差し出されても、黒尾さんの前で繋ぐ訳にはいかず、意味が分からないフリをした。
なのに、強引に手を握られて並んで歩く事になる。
「兄妹の仲が良い事で。」
「もう、お兄ちゃんの顔する気は無いですよ。」
一歩分くらい後ろを歩く黒尾さんにからかわれたけど、京ちゃんは前みたいに不機嫌になる事は無く。
明確な意思を持った、はっきりとした声で返していた。