第1章 三角形 case1
そんな2人と、まずやってきたのは縁日のコーナー。
普通の縁日じゃやってなさそうな、吹き矢とか、手裏剣投げとかある。
見慣れないものを見て興奮が増し。
あれがやりたい、これがやりたい、と、はしゃぎ回っていた。
「取り敢えず吹き矢から行きましょう!」
声を掛けると、私に付き合うように、2人も着いてきて、縁日の屋台の前へ。
そこで、会計用のリストバンドを差し出そうとした時、それを遮るように黒尾さんの腕が出された。
「これぐらい奢らせろって。」
「え?あ、でも…。」
「好きな人には、やって良いんだろ?」
悪いから断ろうとしたけど、随分前に自分が言った事を持ち出され、諦めて手を引いた。
「素直で宜しい。じゃ、コレで1回分ね。」
黒尾さんと店員さんのやり取りがあってから、渡された吹き矢。
ちゃんと、やり方の説明を受けてから挑戦したんだけど。
的に、当たらなかった。
正確に言えば、的まで届かなかった。
隣でやってる子どもですら、的まで届いているというのに、だ。
落胆して、矢はもう1つあるのに、やるのが嫌になってしまった。
「お前、肺活量無さすぎ。貸してみ?」
黒尾さんの声と共に、私の手から奪われる筒。
黒尾さんの息で吹き出された矢は真っ直ぐ飛んで、的に命中した。