第1章 三角形 case1
結局、2人の意見は取り入れず、紫の浴衣に青の帯を選択した。
本当なら、赤の浴衣に芥子色の帯を選択したかったんだけど。
そんな、どっちも選ぶなんてズルい真似は出来ない。
私の現状がズルい自覚があるから、特にそう思っている。
自己嫌悪に陥る前に更衣室に入った。
あっちを2人きりにしておくのは怖くて、出来る限り早く着替えて館内へと進む。
出口で待っていた2人は、当たり前だけど浴衣姿で。
妙な色気を醸し出していた。
京ちゃんは薄茶で、黒尾さんは灰色の浴衣。
私に合わせたように、2人とも帯は青だ。
お揃いとか、仲が良い証明みたいで。
こんな小さな事でも嬉しくなった。
それが、元からのワクワク感に加わり、スキップするように軽く跳ねながら、模された古い町並みの方に向かう。
「コラ。楽しいのは分かるが、スキップはやめろ。また足挫くぞ?」
「さくらが楽しみを体で表現してるんだから、許してやって下さいよ。」
「なんか、2人が夫婦みたいですね。注意するお父さんと、それを宥めるお母さん。」
2人のやり取りが面白くて、振り返りながら思ったまま口に出した。
2人は顔を見合わせて、数秒してから同時に笑う。
気まずい感じとか、険悪な雰囲気は無くて。
今日を楽しんでくれる気持ちなのが見て取れた。