第1章 三角形 case1
向かう先は、温泉テーマパーク。
だけど、目的は温泉ではない。
一緒に入れないからね。
そこには、時代劇に出てきそうな町並みを模した施設があって。
それを、ちょっと体験してみたかったのだ。
2人に挟まれてする移動は、相変わらず緊張しっぱなしだったけど。
到着して、施設の外観…昔のお城みたいなものを見た瞬間に、それは吹き飛んだ。
「早く入りましょう!時間が勿体無い!」
2人の間から抜け出して、入り口に急ぐ。
「…なぁ、さっきまでの緊張どこ行ったんだ?」
「知りませんよ。でも、さくらの気持ちは理解出来ます。
親に放置されて育ったさくらにとって、テーマパークとかは、非常に珍しい場所って認識でしょうしね。」
「だから、あの興奮具合か。はしゃぎすぎて怪我しねぇと良いんだが。」
2人して呆れた顔をしていた事など知らず。
先にフロントまで行って、館内着用に貸し出しされている浴衣を眺めていた。
「あの赤の浴衣に黒の帯とかどうだ?」
「なんで音駒カラー着せようとするんですか。さくら、黒の浴衣に芥子色の帯の方が良いよ。」
「京ちゃんだって、梟谷カラーに寄せてるじゃん。私が着るものなのに。」
追い付いてきた2人が、私の浴衣選びに口を出してくる。
でも、争っている感じじゃないから、文句だけを返しておいた。