第1章 三角形 case1
合宿が終わっても部活に追われる日々を送り。
あっという間にその日を迎える。
朝から緊張して、すでに具合が悪いけど、今断る訳にはいかない。
溜め息を吐いて、待ち合わせ場所に向かった。
2人とも先に到着していて、会話をしている様子はない。
それが怖くて、近付けないでいたけど。
呆気なく、黒尾さんと目が合ってしまった。
すぐに私に声を掛ける訳じゃなく、京ちゃんにも気付かせるようにこっちを指差してから近付いてくる。
「おはよ。小熊。」
「お早う、さくら。」
「お、おはよう、ございます。」
普通の朝の挨拶をされたのに、それすら緊張で上手く返せなかった。
「お前な、もうちょい気楽にしとけよ。折角の、初デートなんだから。」
こういう時、突っ込んでくるのは黒尾さんで。
「かなり妙な形式の初デートですけど。」
明らかな嫌味を向けるのは京ちゃんで。
「赤葦、そういう事言うなって。ガチガチのままじゃ、楽しませてやれねぇだろうが。」
そんな事をされても、黒尾さんは敵意では返さず、注意程度に留めた。
言い合いに発展させないでくれたのは有難い。
「あ、えと。じゃ、行きましょうか?」
気を取り直して声を掛け、2人と一緒に移動を開始した。