第1章 三角形 case1
リビングでテーブルを囲む。
ケーキを食べながらの会話は、3人ともが分かる合宿の話で。
音駒が宮城に行った時に練習試合をした学校が、今週末の合宿から参戦してくる事とか。
夏休みに入ってからの、一番長い合宿で行く森然高校の事とかを話して。
それなりに盛り上がり、楽しく過ごして、2人が帰る時間になる。
見送りに玄関まで一緒に行くと、靴を履いてから黒尾さんが振り返った。
「…なぁ、小熊。今日から恋愛解禁な訳だが…。」
心臓が飛び出そうなくらいの直球が投げられる。
今日、もし、その件に関して何か言うとしたら、黒尾さんの方だろうとは思っていたけど。
ここまで何も言われなかったから、気を抜いていた。
不意打ちをくらって、何も返せない。
「あー…そんな固まんなって。返事が欲しいんじゃねぇよ。
恋愛解禁すんなら、お試しでいいからデートしてくれってお誘い。」
「…俺、先に出ますね。」
「ちょい待てって。流石にいきなり2人きりは小熊も緊張すんだろ?だから、一緒にどうだって話だよ。」
「何言ってんすか?」
イエスもノーも言わない内に、話が進んでいる。
どう考えても、黒尾さんがとんでもない事を言っている気しかしなかった。