第1章 三角形 case1
京ちゃんとは、元々の生活の上では、ほぼ一緒に居ると考えても過言じゃなかった。
そんな人を異性として意識するのは、恋愛をした事がない私には大問題だったようで。
約束通り、怪我をしている間としていたお迎えも、普通の対応が出来ずに顔を逸らしたり。
一緒に歩いてても会話が上手く出来なかったり。
ゴールデンウィーク中にあった合宿でも、つい京ちゃんを避けてたり。
必要以上に、関わる事が出来なくなってしまった。
それでも、京ちゃんの事は気になるし、目で追い掛けてたりする。
普通なら、恋する女子の行動なんだけど。
私の場合、避けてしまう罪悪感もあっての行動だから、訳が分からなくなっている。
それを、相談する相手は…。
『…で、今日も一言も喋んなかったのか。赤葦がカワイソー。』
「京ちゃんと仲良くしてて良いんですか?」
『俺、赤葦を居ないものとして小熊と付き合いたい訳じゃねぇし?今まで、お前が作ってきた人間関係を否定してどうすんの?』
「黒尾さん、本当に高校生ですか?考え方が人生の先輩過ぎてついていけないんですが…。」
『ピチピチの17歳ですよ、お姫様。』
どういう訳か、黒尾さんである。
この人は、聞き上手というやつみたいで。
本来なら、話したら悪いと思えるような事まで、ペラペラと喋ってしまう。
それで機嫌が悪くなる事もなく、受け入れてくれる懐の広さとか。
深刻なまま話を終わらせないように、ふざけた言葉を入れてくるタイミングとか。
どれもが心地好くて、毎晩のように電話をするのが日課になっていた。