第1章 三角形 case1
電気を消した部屋で、私はベッド、京ちゃんは床。
絶対に折れてくれないと分かってるから諦めたけど、やっぱり体を壊したり痛めたりしちゃいけないのは、選手である京ちゃんの方だ。
「…京ちゃん、起きてる?」
場所を替わろうと声を掛けた。
「…何?」
「あ、えっと…。その…。」
京ちゃんが心配、なんて言い方じゃ、俺の方が心配してる、って言い返される。
何と言えば納得してくれるかなんて分からなくて、迷った言葉を最後に黙ってしまった。
溜め息の音が聞こえてきて、暗い部屋の中で動く気配がする。
京ちゃんが起き上がって、ベッドの横に来たのはすぐに分かった。
「さくら、ちょっと詰めて。」
布団越しに私の肩を押し、奥へと追いやる。
私が移動して出来たスペースに京ちゃんが入ってきた。
狭いベッドの中で身体が触れ合う。
シャツ越しに伝わってくる体温に、心臓が壊れそうなくらい早く動いていた。