第1章 中学
「好きっス」
降ってきた声は、信じられないもので
「・・・嘘」
「嘘じゃないっスよ、なんで嘘なんかつかなきゃいけないんスか!?」
「だ、だって・・・」
「?」
「え、あ・・・好きになられても困るって・・・言われるかと思ってた、のに・・・」
嬉しくてか、その覚悟を想ってか、じわりと涙が滲んだ
「え、ちょ・・・泣かないで!!」
慌て出す涼太
「めちゃくちゃ・・・怖かった、のに、なんでそんな、簡単に、す、好きとか」
「な、なんで怒ってるんスか!?」
涙が、頬を伝ったのがわかった
「早く・・・言って欲しかった」
何だ何だ今までいっぱい悩んできたのがバカみたいじゃないか
両手がそっと伸びてくる、体がふわりと優しい香りに包まれる、涼太の匂い
「あー、もー、泣かないでって言ってるじゃないスか」
抱きしめたまま片手で頭を撫でてくる、優しい手
「ん・・・」
「ねえ、りんっち・・・オレまだ返事聞いてないんスけど」
「・・・分かってよ」
この状況で言うとか恥ずかしすぎる
「えー、言ってくんないと分かんないっスよ」
「人のこと、泣かせといて」
「りんっちが返事してくれないとオレも泣くっスよ!?」
「ええ!?」
なにそれ、困るじゃないか!
冗談だってわかってるけど
「・・・好き」
めちゃくちゃ小声だけど、距離が近いから聞こえてるはず
言葉にした瞬間に涼太の手がさらにきつくなったからそれは確信に変わった
「うん」
声が返ってくる、溶けそうなくらい優しい声
「大好きっスよ、りんっち」
もう声にならなくて、涼太の腕の中で何度も何度も頷いた
ようやく涙が止まって、抱きしめていた腕が離れていく
人いなくてよかった
あんなん見られたら恥ずかしすぎる
「送ってくっスよ」
「ん、ありがと・・・」
いつもさよならする別れ道で、涼太がそう言って笑う
あたしの家の側の道に一緒に来てくれる
それが何か関係が変わったことを伝えているようで嬉しかった
手を繋いで歩く
どうしようもないくらい幸せだった