第1章 中学
数秒間をおいて、なにか考え込んでいたさつきは言った
「好きになっちゃったら、アピールしたほうがいいと思うけどな・・・」
たしかにさつきのテツヤに対するアピールはすごいと思う
でも、あたしは自分にそこまで自信があるわけじゃないんだよ
「できたら、いいよね」
急いで着替えて帰ろう
涼太に会わないように
電話がかかってきた。
誰からだろうと画面を見る。
桃っちからだ、部活の連絡だろうか。
「もしもし、きーちゃん、桃井です」
「どしたんスか?部活のこと?」
「ううん、違うよ」
「じゃあ、なんスか」
「いいかげん、りんに言ってあげてよ」
その言葉に動揺した。冷静を装って返す。
「なにを」
聞かなくても想像がついた。
桃っちの勘はすごいことは身をもって知っている。
「好きだって」
ほら、予想通り。
「どしたんスか、急に」
「りんの気持ちに気付いてるんでしょ?」
その言葉に少しだけ驚く。
だって、その言葉が示すものは1つだし、それを桃っちから伝えられるとは思わなかったから。
「その言い方、やっぱオレのこと好きになってるんスよね!?」
「確信してなかったんだ」
「んー、意識してくれてることはわかってたんスけど、好きかどうかは・・・」
「りん、きーちゃんのことで悩んでるんだよ」
「えへへ、それは嬉しいっスね~」
「ゆるいね・・・」
「嬉しいんスもん」
「でも、りん、泣きそうだったよ」
「・・・」
「好きな子、泣かせるようなことしないよね?」
「桃っち、・・・ちょっと怖いっスね」
「りんのこと大事だからね」
「オレだって」
「いい結果楽しみにしとくから、ね」
ツーツーと通話終了の音
先ほどの話を思い返す
ひどい男かもしれないけど、やっぱり嬉しかった
オレのこと好きになってくれたってことが
「けど、まあ・・・泣きそうな顔させるわけにはいかないっすよね」
桃っちも怖いし・・・