第1章 中学
付き合ってるように見えるんじゃないかな、なんて幸せな気分は、涼太の言葉で消えた
「りんっち、ごめんちょっと彼女のふりして」
耳元で涼太が囁く
「え、え?」
「ファンの子に見つかっちゃみたいで、下手したら大騒ぎになっちゃうっス」
チラチラとこっちを見て何か話してる女の子たちが確かにいる
……というか半分囲まれてるんじゃない!?
やばい、焦る。というか彼女のふりなんてしたら恨みを買うんじゃないか!?
「それってあたしと一緒にいるほうがやばいんじゃないの?」
「りんっちがいなかったら、オレこの店出られなくなっちゃうっス」
「……」
ちょっと、想像できた
「お願い」
頷く、しょうがないよね
耳元から顔が離れて少し大きく息を吐く
ああ、緊張した
なんて思った瞬間、手を握られた
あ、やばい、顔が暑い
……そんなわけないってわかってても、なんだか嬉しいなんて、馬鹿
強く手を引かれる
人ごみを縫うように進んでいく
「黄瀬くーん」
黄色い声が聞こえる
「一緒にプリとってくれませか?」
話しかけてくる女の子達に
「今、デート中っスから」
そう言って断っていく涼太
すごい目であたしの方を見る女の子達、怖い、女子って怖いよ
「りょーたー」
怖いって、声で訴えてみる
「後でなんか奢るっすから」
違うよ、そういう問題じゃないんだよー
近づいてくる女の子全員に、デートだと言って、誘いを断って
とりあえず、店の外へ出る
握られていた手が離れた
「……」
少し寂しい、なんて思ったらいけないのかな
「みんな待ってるから、戻ったほうがいいんじゃない?」
「そうっスね」
見つからないように注意しながら、もう一回店内へ
見つからなかったみたいだ、よかった~