第1章 中学
「……できるの?」
「大丈夫っス、これから彼の動きを観察して、完璧にマネしてみるっス」
「ええー!?」
さつきが驚いたような声を上げる
テツヤと敦もややギョッとした顔をする
「……頑張って」
なんか涼太なら出来そうな気がしたからあたしはそう声をかける
「りょーかい」
一瞬だけ、涼太の笑顔に見蕩れてしまった、かっこいいんだもん
で、涼太は集中するためだろう、あたしたちに背中を向けて、小学生の少年を凝視する
なんだか奇妙な図だ
「ねえ、りん。きーちゃん待ってるあいだ暇だから、ちょっとやってみようよ」
「……そうだね」
よしやってみよう!
そういうわけで、お金を入れて、画面を見据える
涼太よりはいい点数出したいな、なんてね
「ん~、むずかしいね・・・」
自分のやってみた点数を見て、苦笑い
「初めてにしてはいいほうじゃないですか?」
と、テツヤ
相変わらず優しいことで
「ありがとう」
「あたしもやるね!」
さつきもやるらしい
「頑張って」
「うん!」
「初級モードでも汗かくんだね」
さつきが、額にうっすらと書いた汗を拭う
「敦、お菓子は諦めたほうがいいんじゃないの?」
「えー……」
「その必要はないっスよ!!」
そこに現れたのは涼太
どうやら観察が終わったらしい
「できるようになった?」
「完璧っスよ」
涼太はお金を入れると、勢いよくスタートボタンを押す
おお、さっきの涼太とは大違いだ!
上手、だからすごくかっこいい
そんなこと考えてしまって、顔が火照る
「りん?」
さつきがこっちを見た
「もしかしてさー」
ちょっと笑ってる、バレた?
それ以上何も言わなかったさつきに感謝した
こんなところで、涼太のこと好きなんじゃない?とか聞かれたら、全速力で家に帰ってただろう
「うん、そうみたい」
それだけでさつきはわかって頷いてくれる
「お互い頑張ろうね」