第7章 個性把握テスト
「炭素繊維と特殊合金の鋼線を編み込んだ“捕縛武器”だ…ったく、何度も何度も“個性”使わすなよ…」
「俺はドライアイなんだ」
「「“個性”凄いのにもったいない‼」」
「時間がもったいない。次準備しろ」
次まで順番まだだし…よし。
『緑谷君、右手貸して?』
「っえ⁉」
彼の右手を両手で包み込むと、緑谷君は顔を真っ赤にして俯(うつむ)いてしまった。
『(女の子に慣れていないのかな?いや、慣れてても困るけど)…モード“天竜”』
私の両手から淡い黄緑色の光が溢れてくる。緑谷君は違和感を持ったのか顔を上げる。
「うぇえ⁉な、何して…」
『落ち着いて緑谷君、すぐ終わるから。…ほーら、治った』
「え…」
私が両手を離すと、緑谷君の右手の人差し指の腫れは完全に治っていた。彼は驚いた様子で、手のひらを握ったり開いたりしている。
天竜グランディーネ…その娘、ウェンディの癒しの力には毎度お世話になっていた。まさか、自分が人に使う日が来るなんて…
『(人生、何か起こるか分からないな)』
『もう右手は大丈夫そうだね、良かった』
「あ、ありがとう!凄いなぁ君の“個性”は…あの、えと…」
そういえば自己紹介がまだだったな…というか普通、自己紹介ってクラスで一番最初にやると思うんだけど…あぁ、ここは普通じゃないんだった。
『八雲暁。君とは入試でも会ったと思うのだけど…覚えてる?』
「もちろん覚えてるよ!あの時も怪我を治してくれたよね…あ‼お礼、言えなくてごめん…」
見るからにシュンとする緑谷君。そんなに気にしなくてもいいのに…慌てて彼に顔を上げさせる。
『いいよそんなの。別にお礼言わせたくて思い出させたわけじゃないしね』
「で、でも…」
「次、八雲!」
あ、先生に呼ばれちゃった。行かなきゃ。
『また後でね』
「う、うん!」
ボールを投げる位置に向かいながら考える。
『(私はまだまだ…“この世界”について学ばなきゃいけないな)』
「ついこないだまで…道端の石っコロだったろーが…」
_良いなぁかっちゃん、“個性”かっこいいもんなぁ。僕も早く出ないかなぁ_
_デクがどんな“個性”でも、俺にはいっしょーかなわねーっつーの!_
「_道端の石っコロだったろーが!!!」
『……』