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春の風【銀魂】

第1章 序章


場所は変わってここは船の甲板。船といっても空を飛ぶ戦艦のようなものである。

そこには大きな月を見上げ、1人男が佇んでいる。

天人襲来により持ち込まれた宇宙最先端のテクノロジーや知識は良くも悪くも人々の生活を変えていった。敗戦し、開国以降この国の人々は天人に逆らえず過ごすしかなかった。

しかし異分子は必ずおり、幕府はその者たちを攘夷派と呼びお縄につかせようとしている。この男もその異分子の1人。幕府にとって今1番警戒されている者の名は、、

「晋助、」

「…なんだぁ、万斉。月見酒の誘いか?」
 
晋助と呼ばれた男は月から目を離さず、夜にもかかわらずつけているサングラスと会話する気があるのかしっかりと耳にヘッドホンをつけた男、万斉にクツクツと茶化しながら答えた。


「こういう夜はお主、酒など必要ないのではないか?」

「わかってて声かけたのかぃ、無粋だねぇ」


徒労を組んでから長くなってきたため、こういう月夜はふらっと甲板にでていく姿は仲間にも何度か見られている。1人の女を思ってただ月を見上げ、物思いに耽るといったことは知らず知らずのうちに周知されるようになった。
その思い人はかつてこの男、高杉晋助の恋仲だった女性だ。名を夏木春瑠、攘夷戦争を共に戦った盟友であり、そしてかつての寺子屋の先生の娘。その娘がどうしても愛しく、どろりとした、他から見れば過剰なほどの愛情をとめどなく注いでいた。

自分の籠に閉じ込めておきたいと思うほどの恋人は今なぜ高杉の隣にいないのか…
それは激しさを増す戦争の中、空き家で束の間の休息をし、食料や武器の調達へ、かつて仲間だった白髪天パや他数名と出かけた時のこと。どこからか隠れ家となっていた空き家の場所が天人側にもれ襲撃された。足軽からの伝来でいの一番に駆けつけたが、すでに空き家は半壊。空き家に残っていた仲間は重症もしくは戦死していたが、敵の骸の数もなかなかで、戦力の主力が抜けた状態でも健闘したとわかる様だった。死亡してしまった仲間を弔っていると、何故だかどうして自分の愛しい恋人は見つからなかった。ついぞそれ以降、春瑠には会っていない。仲間には死んだと諭されることも度々あったが、死体を見てない以上どこか望みを捨てきれず、戦争に敗戦した後に再び立ち上がった今も恋人を想う心は変わっていないのだ。






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