第15章 しょうらいのゆめは
いつも夜は、私はリビングに、繋心さんは部屋にいるのに、二人で静かに付けっぱなしのテレビを見ていた。
見ていた、というのは正しくない。
緊張しすぎて、私は音すら耳に入ってこない。
つけっぱなしのものを流している。
そうしたかった訳じゃないのだけど、お互い一ミリも動けずにいた。
繋心さんは、大きな手のひらを私のそれに重ねていた。
少し乾燥していて熱い。
なんでかはわからないけど、それ以上に恥ずかしいことだってたくさんしてるのに、いたたまれない気持ちでいっぱいだ。
「マジな顔、してる?」
「…はい」
「あー、なら、いい…」
やっとした会話…。
お笑い芸人の司会の声が部屋に響いて、笑い声が上がる。
青白い画面を少しだけ見て、また視線をおろす。
「あの、繋心さん…」
「あ?」
「なんで、今日は、恥ずかしがるんですか?」
「てめえがさっき…あんなこと言うから…!」
はあ、とため息をつかれる。
勢いはどこかへ行ったのか、いつもの気だるそうな繋心さんにもどる。
「吸っていいか?」
「ダメ…」
「あ?」
「手、放しちゃダメです」
ちゃぶ台に向かう手を制止する。
ほとんど無意識だった。
「もう一回、真剣な顔して?」
「…………言われたら出来ない」
端に寄せられていた座布団をそっと私の背中に敷きながら、やんわりと押し倒される。
ふんわりと煙のにおいがした。
「もう、抑えられねえからな…」
低く耳元で囁かれる。
その掠れた声がお腹の奥にじゅくっと染みる。
熱のこもった目を見られるのが恥ずかしくて、こくこくと頷くことしか出来なかった。