第15章 しょうらいのゆめは
繋心さんが買い出しをしている間、私は路駐対策でぼんやり車に乗っていた。
手持ちぶさたになったので、鞄から通帳を出して開いた。
恐らく奨学金を使わなくても大学に入れるお金。
徹さんのお父さんは、私にすらそのくらいのお金を用意してくれていた。
もう死ぬつもりでいた私は、この先のことなんて何も考えてなかった。
空虚なこの先に、何を望めばいいんだろうか。
「待たせた」
安心する声がすると、現実に戻れた。
「おかえりなさい」
「今日親父たち朝まで飲みで帰ってこねえから、適当に飯食うべ」
「はーい」
気の抜けた返事をすると、車が発進された。
「大学、どこにするか決めたか?」
「ううん、行くかも悩んでます」
「勿体ねえな。その金どうすんだよ」
「繋心さんとの結婚式費用に…」
とにっこり笑うと繋心さんは真剣な顔になる。
「ダメだ。それは俺が作るんだ」
「結婚、してくれるんですか!?」
真剣な顔のまま、赤くなっていくのが少し面白かった。
「俺が、そんな無責任に見えるか?」
「ううん。
繋心さん、大好き」
嬉しくて、その顔が好きでじっと見ていたら、またでこぴんをされた。
「いったあー!」
これが結構痛い、私は涙目でおさえつける。
「ガキのくせに…!」
「ガキに色々してるくせにー」
「後で覚えとけ…」