第13章 迷い道
あの日、彼女に興味を抱かずにいられたら、どんなによかっただろうか。
幸せに隣で笑ってくれていたのだろうか。
その日の練習はさほどハードでもなく、喪失感を埋めるのに丁度いいくらいだった。
体内に水を流し込むと、誘いも断って町に出た。
何か気分転換にと映画館に入った。
下らない恋愛モノだった。
ほとんど流し見で、内容なんかほとんど覚えてない。
演技でもいいから、隣で笑って欲しかったな。
と柄にもないことを一瞬思った。
……最悪。
まだ家に帰るのも悔しい、外で食べて帰ろう、とそのまま近くの店に入った。
座席に案内されると、何かを踏む。
「スマホじゃん……」
ロックもかからず、すんなり開くと見覚えのある店名。と、オッサンの名前…。
画像は残念ながら水族館の写真が数十枚。
「オカズもないんじゃ、返してやるか…」
電話帳からそのままオッサンにかける。
反応が楽しみだった。