第106章 【番外編】願い事
遠くのざわめきと、近くから聞こえる夏虫の声。
人の住む世界とは違う異世界に迷い込んでいくかのような木のトンネルをくぐりながら、長い石段を登った。
繋心さんは私の手首から手を離して、腕に捕まるように指示した。
浴衣の裾を片手で持ち上げながらあいた手で言われたようにする。
体重が幾分か軽くなったように感じて、さっきより楽に登れる。
漸く頂上につくと、いよいよ揺れる木の葉の音と虫の声しか聞こえない。
街の明るさが下に広がっている。
その明るさが空に写ったかのように、大きな音と共に花が咲く。
「間に合ってよかったな」
「すごい…近く見えます…」
大きな花がまるで空を覆うように開く。
「だろ?特等席」
ちょっと自信ありげに笑って、岩のベンチに座るように促される。
「教えてくれてありがとうございます」
また一つ、新しいことが一緒に出来て、すごく嬉しくて顔が熱くなるのと一緒に口角が上がる。
不意に影を重ねるようにキスされ、ぎゅっと目を閉じる。
舌を入れられ、絡め取られていく。
少しだけする煙草のにおい。
舌がいつもより熱く感じて、いつもより少し気持ちいい。
拙いけれどなんとか答えて、甘えたくて首に腕を回す。
「今日のるる、いつもと違うから、取られそうで不安になる」
「大丈夫です…いつも繋心さんのことしか考えてないです……」
深くなっていく口づけに体重がゆっくりと私にかかっていく。
背中に石の冷たさが伝わってくるけど、暑すぎて気持ちいいくらい。
花火が終わったのにまだ身体をゆっくり撫でられている。
「っ…!は、ん…」
時折舌を吸われながら熱い手が私の身体をくまなく這う。
もう意味ないほど下着は濡れ、可愛く着付けてもらった浴衣が崩れる。
全てのことがどうでもよくなるくらい気持ちよくて、お腹の奥が脈打つみたいに疼いている。
下着越しに触れられ、くちゅくちゅと水音が響く。
指を段々と侵入させていく。
芽をゆっくり撫で、入口を上下に擦られ、物足りなくて腰が揺れてしまう。
「あ……はぁ……」
察したのか彼の長い指が一気に侵入した。
「ひぁあっ!!」
目の前がチカチカした。
一瞬で好きなところまで抉られると、頭が真っ白になる。
生き物のようにナカを触られながら口を塞がれ、食べられてしまいそうなほどの深いキスに溺れそうになる。
また目の前が光る。
真っ暗なのに、まぶたの裏は白い。