第105章 【番外編】返せない
綺麗にされて目が覚めた。
それでも床にいる。
立てない……。
太陽が沈んでて肌寒い。
「起きたなら帰るよ」
冷たくそう言われ、待ってくれていたのがわかる。
それでも私は、徹さんになんて言ったらいいかわからない。
「やば……」
急に徹さんは焦ると、私を抱えて一緒に近くの掃除用具入れに入る。
身体が大きいから、少し窮屈そうだ。
「な、なに…」
「静かに!」
懐中電灯の明かりらしいものがふわふわと彷徨っている。
見回りの人が巡回に来たらしい。
ドキドキと心臓が鳴る。
たまに徹さんがわからない。
行為はいつも乱暴で荒々しくて、怖いのに。
その後はいつも起きるまで待っていてくれたり、髪を撫でてくれたり…。
でも、私は、徹さんの全てを受け入れることはどうしても出来ない。
助けてくれた、恩人でも。
また涙が出そうになる。
私は、何も返せない、今までも。
これからも。