第8章 スポットとお赤飯
やっと静まり返った夜更けに、るるの部屋へ向かった。
まだ普通に入るにも勇気がいるな、と緊張しながら声をかけて開けた。
「…あー、あの、どこ行きたいか決めたか?」
照れ臭くて主語を抜かして聞いた。
大分ぼそぼそと話してしまったからか、るるは柔らかく、え?と聞き返した。
「あ!もしかして、お出掛けですか?」
柔らかく笑うと手を引いて中に入れてくれた。
「…ん」
「なんか東峰くんが雑誌に付箋貼って色々教えてくれて!」
と全く同じ雑誌を鞄から取り出した。
付箋のメモまで同じで、アイツのマメさをかなり侮っていた。
「そんなん車だし、4ヶ所くらいは回れんべ?」
と地図を広げながら確認していく。
「まとめて行っちゃったら、次どうするかまた迷っちゃうじゃないですか」
と膨れて言われる。
それもそうだな、と返すと雑誌に目を落とした。
結局一時間ほど話し合いして、結論は、るるが小学生以来の水族館ということになった。
「人生での初デートが繋心さんで嬉しいです」
「……お前、もっとモテんだろ?」
なんて可愛いこと言うのか…!と思考が停止して、やっと戻れた。
現実問題、彼女の言動はどこか擽られる。
甘え方を弁えているというか、わかっているというか。
なんとかしてやりたくなる。
高校生なんてひとたまりもないだろう。
「全然そんなことないですよ?」
尚且つ大人びていて、足元にも及びそうにない精神年齢の高さが、防壁にでもなっているのだろうか。
「ならいい」
手を引いて、膝に乗せる。
甘ったるい香りが汚い肺に浸透していく。
同じ家に住んでいるというのに、この前から上手い具合にカワされてて事に致っていない。
「あ、また吸いましたね!」
「悪いかよ」
「スポーツしてるんですから…勿体ないです…」
「プロじゃねえし、イイんだよ」
またはぐらかそうとしている。
「なあ、るる…」
「…う…はい…」
「イヤなのか?」
「いやじゃ、ないです……」