第2章 Morning Kiss【至】
「今日、イベの最終日なんだよね。
最後の追い込みってことで
仕事、早めに切り上げて帰って来るから」
ゲームの事になると
まるで、別人のように変貌する、至さん。
コロコロと変わるその表情に
くすりと笑うと
頭の上に乗せられていた手が
輪郭をなぞるように頬に下りてきた。
「それに…、監督さんの顔も見たいしね」
『なっ…!』
いつも、何食わぬ顔で 甘い言葉を口にして
私を惑わせる 意地悪な一面もあるけれど…。
「あはは。もしかして、照れてる?」
『て、照れてません!』
「じゃあ、風邪か」
『風邪も引いてません!』
本当は そんなところも、大好きで。
「…おいで」
そう言って
ふいに 私の腰を抱き寄せ
整った顔を近付けて来る。
触れるだけの軽いキスに
歯痒さを感じ、強請るように
上目遣いで見つめ返すと
それに 応えるように
もう一度 唇を重ねられた。