第2章 始動
~JAPAN サイド
今日の警視庁はいつにも増して騒がしい。
どこの部署も多くの警察官が噂話をしている。
普段のこの時間帯は落ち着いているのだが。
警視庁がいつもと異なるその原因はおそらく、今しがた張り出された"人事異動通告"のことだろう。
普通の人事異動でもある時期になると多くの警察官はそわそわと落ち着きがなくなるが、今回は少し異なる。
なぜならば、警視庁では少々名の知られている”機捜隊の問題児”の人事異動だからだ。
この人物が多くの警察官の仕事の手を止めている元凶である。
その問題児が何者なのか、少し気になるだろうがその話は追々することにしよう。
そしてその人事異動の影響か、捜査一課、組織犯罪対策課、サイバー犯罪対策課、科捜研の各部署から一名ずつと、その問題児を含めた警察官達が新しく設置された部署へと異動になった。
突然の発表に警視庁に勤務する警察官の多くはこの人事の意図を見いだせず、困惑の表情を浮かべていた。
そんな中、自分の事が噂になっているとは塵ほども思っていない例の問題児は人事異動が内示される少し前―――上司から人事異動についてで呼び出された日から着々と引き継ぎの準備を始めていた。
この人事に対しての疑問や驚きが無い分、同じく異動になった他のメンバーよりも手際がよく、スピーディーに事を済ませていく。
その問題児が今まで所属していた、警視庁機動隊捜査隊の警察官達は、表情には出さないものの内心では問題児の異動を喜んでいたかもしれない。(彼らの心までは私にも読むことが出来ない)
そう他人に思われてしまうほど、扱いづらい人物だった。
中には『そんな問題児を引き抜いた人物は余程の変わり者か、阿呆のどちらかだ』と思う輩もいるようだ。
真実はどういうことなのか、それは誰にも分からなかった。