第2章 始動
丸山の説明が終わった後、メンバー達で池辺の指示通り、これからの捜査について話し合いが行われた。
捜査一課の捜査とは別の視点で行う、現場近くでの聞き込み、監視カメラの映像の確認、科捜研による遺体や証拠の再調査など、他の部署の力も借りるということだが再捜査といってもやることは山のようにある。
しかも時間が無いわけであるから、緻密な計画が必要だ。
丸山、角田、後呂達が半円テーブルで真剣な面持ちで話し合いをしている間、服部と知念は池辺のデスクに呼び出されていた。
「知らせるのが遅れて申し訳ないが、君達には明後日にHLへ出発してもらいたい」
「明後日ですか?」
「そうだ。何回も言っているが私達に与えられている時間は限られている。それに何事も早く行動するにこしたことはないからな。此方でHLでの捜査で必要になるモノを用意して、既にHLに送ってある。まぁ個人の荷物は出発までには準備しておいてくれ」
「はぁ。何がなんだか、わからなくなってきた」
頭を抱える知念とは裏腹に、服部は生徒が教師に質問するように右手をピシッと伸ばして池辺に尋ねた。
「ししょ、、じゃなくて係長!バナナはおやつに入りますか?」
子供のような言動をする23歳の警察官に「遠足に行くんじゃないんだぞ、お前」とすかさず知念が服部の肩を自身の右手でがっしりと掴み、的確なツッコミをいれる。
こんな脳内が小学生の服部に怒ると思いきや池辺は「これは自論だが、バナナはおやつではなく食後のデザートだと思うぞ」と大真面目に馬鹿げた質問に返答をした。
係長も見かけによらず阿呆なのかもしれない。
「まぁ知念君も知っていると思うが、服部は警視庁でも有名な問題児だ。HLでも何かしら問題行動をするだろう。それを未然に防ぐ意味で、君にはしっかりと服部の手綱を引いて貰いたい」
「元よりそのつもりです。厄介事はご免なので」
「そう言ってくれると心強いな」
そして知念と池辺は互いに目をあわさて、ガッシリと握手を交わした。
そんな二人の様子を見た服部は、
「何で私が問題を起こす程で話が進んでるんですか?というか私、今まで問題行動なんてしましたっけ?」
と顔をポカンとして二人の話の内容をまるで掴めていないようだった。
その本人の自覚の無さに、二人が服部を睨みつけたことは言うまでもない。