第5章 開戦
時は流れ、IH予選2週間前になった。
時刻は朝7時。第一体育館にて、私は部長の結さんにサーブを打ってもらいレシーブをしていた。
「あの、結さん」
「んー?どうしたの?」
優しい声色で私の方へ向き直る結さん。
「朝練に人…全然集まりませんね…」
「…み、みんな忙しいんだよ!きっと!」
えへへ、と少し困った表情で笑いかけるが、今にも泣きそうな顔だった。
「結さんがガツンと一言言えば変わりますよ?」
「いやー、あたしもキツく言うの苦手でさー…」
かしかしと後ろ頭をかく結さん。
みんな…勝ちたくないの?
そりゃ、今のままでも十分なくらいうまい人はいるけど…
そういうのって、個人の能力がいくら高くても連携プレイみたいなのが大事なんじゃないの…?
ギリッと唇を噛みしめていると結さんが近寄ってきて私の頭をポンと軽く叩く。
「ごめんね、栞」
「な、なんで謝るんですか…っ」
「大会前に弱気になるの私の悪い癖だ。もう言わない!
みんなにも一応声かけてみるよ」
にしし、と白い歯を見せる。
「それでこそ結さんです」
「なーんか栞って後輩じゃなくってあたしの先輩みたいだなーww」
「あっ、すいません!偉そうで!!」
「違う違うーw毎回助けられてばっかりだからさっ」
結さんの言葉の意味はよくわかんなかったけど、元気になってくれてよかった。