第1章 女が笑う街の角
人々の喧騒が並び立つアパートの開け放たれた窓から降ってくる。
休日に開かれるマーケットは今日も盛況で、子供達は小遣いを握りしめ何人も駆け抜けていった。
そこらで買ったコーヒーを飲みながら久しぶりに手に入れた母の故郷、日本の新聞に目を通せば面白い記事が飛び込んでくる
これからの生活に心が踊ったのか、その記事に心が高なったのか。
自分でも驚くほど自然にふっと笑みがこぼれた。
腕時計を見ればもう予定時刻に近付いており、時間潰しの為に立ち寄ったマーケットで何だかんだ1時間は潰せたらしい。
足元に置いた古びたトランクケースを持ち、空になったコップを返却して空港へと歩き出す。
「さぁ、まずは平成のアルセーヌ・ルパン。
その名前を頂戴しに参りましょうか。」
ポンッと無造作にゴミ箱からはみ出すゴミの上へと置かれた異国言語の新聞は英語に塗れているゴミ達の中で目立ち、自国語が混じるとある一文がその後ゴミ箱を通り過ぎる人々の足を止めていた。
『平成のArsene Lupine、怪盗キッド』