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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 一松さんの機嫌が悪い。
 かなり悪い。

「一松さん、またゲーセンに行きませんか?」
「悪いけど俺、用事があるから」

 社会性ゼロのニートが用事とな。

「一松さん、一松さん。一緒に散歩に行きませんか?」
「悪いけど十四松とパチンコ行くから」

 どうせ勝てないでしょうがっ!!

「一松さん、一松さん、一松さん。猫スポットを教えて下さいよ」
「自分で探せば?」

 …………。

 あの子猫騒動の一件以来、一松さんが冷たい。
 これが噂に聞く倦怠(けんたい)期というやつか!?
「一松さーん……」
「後にして」
 紫のパーカーが去って行く。
 好感情にしろ悪感情にしろ、かまわれてる状態が普通だったから、孤独が身にしみる。


 私はすっかりショボンとして、六つ子の部屋の戸を開ける。
 平日の昼間だというのに、今日もお兄さん方はダラダラされていた。

「ん? どうしたの、松奈。元気ないね」
 とトド松さんが私に笑いかける。

「あの~ですね、お兄さん方。これは別に一松さんのことではないんですが、とにかく本当に一松さんは一切関係ないのですが!! 
 その~、男性の方のご意見として、恋人に何をしてもらえたら一番喜びますか!?」

「S○Xじゃない?」と長男。
「S○Xじゃないのか?」と次男。
「S○Xだと思うよ」と三男。
「S○Xだね」と四男。
「S○Xだよ!」と五男。
「S○Xだよね」と六男。

「うわああああああああっ!!」

 ストレートすぎる即答に、畳をバンバン叩く。

「あのですねえ。お兄さんたちっ!! 私、一応女の子ですよ!?
 もっとオブラートに包むとか何とか、ないんですか!!」

「ほとんど男所帯みたいな家に転がり込んどいて、配慮を求められても……」
 とちゃぶ台に頬杖つくチョロ松さん。

「それに、どう言い方を変えても、男は最終的にS○Xだからね!」
 爽やかに言い切るな、クズ長男っ!!

「てか、何で一松さんが部屋にいるんですか!!」
 腹いせに、座布団でバシバシと一松さんを殴る。

「いや俺は最初からいたし。普通に入ってきたの、そっちでしょ」

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