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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い




 今、松野家にはカラ松さんと私しかいない。

 他の四人は遊びに行った。多分、子猫の相手が面倒で逃げたんだろう。
 カラ松さんは、どうやら子猫のお守りに残されたらしい。毎度、貧乏くじな人だ。

 とはいえ、さしもの彼も本物の『子猫ちゃん』相手に四苦八苦である。

 きっと他の兄弟をうらやみ、自分も遊びに行きたいと思っているんだろう。 

 お、ネズミを捕まえた! てしてし。
『××××××××』
 何だか拍手された。そして子猫相手だろうとキザに前髪をなでつける。
『×××××、×××××』
 多分痛い発言をしてるんだろうが、サイレントな状態だと、痛さがない。

 何だかんだで私の相手をしてくれるとか、実は良い人?

 申し訳なくなってきて、足にすりすり。抱き上げられたので顔を舐めてあげる。
 あ、嬉しそうだ。ゴロゴロゴロゴロ。
 ひたすら喉を鳴らす子猫に、カラ松さんは顔をほころばせるのであった。

『少し休むか?』

 カラ松さんが畳の上に横になったので、私もぴったり寄り添ってゴロゴロ。
 んん? 腕を出された。前足で踏み踏みすると笑い声。
 ……まさか、腕枕のつもり?

『ここで寝ると良い、子猫ちゃん』
 えええー。あ、ちょっと。腕を動かないで下さい。
 慌てて前足でカラ松さんの腕をホールドし、そのまま一緒に横になる。
 腕を舐め、ゴロゴロ。背中を撫でられゴロゴロゴロ。
 カラ松さんは笑っている。

『×××××、×××××』

 優しくされ、私はふわふわした気分で寝てしまった。

 …………

 …………

『…………』
 凶悪である。食卓の雰囲気は凶悪だった。
『××……、×××××、×××××』
 カラ松さんが何か言う。
『×××××!?』
 一松さんが何か答える。
『!!……、×××××……』
 ビクッとし、うつむいてボソボソと返答するカラ松さん。
 他の兄弟達は下を向き、無言で夕食を食べている。
 いったいどうしたんだろう。私はにゃー、と鳴く。


 カラ松さんの胸元で。


 一松さんは夕方頃、大急ぎで帰ってきた。
 ほぼ徹夜に近い状態だっただろうに、私を戻す方法を探してくれたのだ。
 だがその努力が徒労に終わったことは、猫でも分かった。

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