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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 次の日の河川敷にて。

「こいつはもう、おまえと仕事しないから」
「ええ~。せっかく常連もついたのに~?
 わ、分かったざんすから! そんなに睨まないでほしいざんす!!」
 イヤミ社長は一松さんがちょっとすごんだだけで、アッサリと私の退社を認めた。

「あとその薬を渡せ。こっちで処分する」
「だ、だけどこれはすごく高く――分かった! 分かったざんすよ!
 もう退職金代わりに持ってけばいいざんす~!!」
 イヤミ社長、半泣きである。
 しかしそれ以上に一松さんに対し、猛烈に怯えているみたいだが。
 何かあったんだろうか。まあいいや。

「行くよ」
「はーい」
 イヤミ社長に目で謝りつつ、一松さんについていく。
 昨日のツケ払いで、やっと出来た貯金もゼロに逆戻り。
 あと一ヶ月半で三百万かあ。

 博士はもう機械だけ借りちゃったそうだ。
 他の部品類も用意して一ヶ月半後にこの町に戻るらしい。

 機械を使用するためのパスコードは、三百万をあちらに払ってから。

 お金を用意出来なかったら?
 機械は即返却。二度と借りられなくなるかもって。

 何を言いたいかと言えば、元の世界に戻るのは、多分ワンチャンス。
 
 どうしたものか、と思いながら一松さんについていく。

「あれ? その薬、どうするんですか?」
 すぐ捨てるかと思いきや、一松さんは薬の瓶をポケットにしまっていた。
「こんな薬なら、買いたい奴もいるでしょ」
「あ、それならもう一度飲んでみていいですか?」
「は?」
 私はできる限り可愛く、腰をくねくねさせ、
「いいじゃないですか。変なことはしませんよ。
 ほらほら、美少女になった私とデートしたくないですか?」
 えへ☆
「いや別に」
 即答! だが、これは喜ぶべきなのか?
「薬をこっそり何錠か抜き取って、自力で商売しようとか考えてないよね?」
 す、鋭いっ!! 一方、一松さんは私をじーっと見て、

「前から思ってたけど。おまえ、俺ら並みにクズなところあるよな」

 おいーっ!!

「人生最大の侮辱です!! 人間として言ってはいけない最後の一線というものが
あるでしょう!! 私のどこが、あなた方に似ていると仰るんです!!」

「そういう返しが、一瞬のためらいすらなく出るところ」

 私のポカポカ攻撃を胸で受けながら、一松さんは冷たいお顔だった。

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