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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



「変なこと考えてないで、せっかく外に出たんだし、どっか行こう。
 またゲーセンに行く? それとも子猫を見に行く?」

 え? 子猫!? 見たい見たい!!
 ……う、ううん。それはそれで楽しいんだけど。
 でもデートコースがいつまで経っても、活動範囲内から一歩も出ないというのがなあ。
 たまにはもっとこう――。

「……。そんなに不満なら、ほら、口を開けて」
「え? あーん」

 パクリ。何かが口の中に入った。つい飲み込んでしまう。
 見ると一松さんが嫌そうな顔で瓶を見ていた。

「言っとくけど、この薬が安全かっていう根本的な問題もあるからね?
 こういう怪しい薬って、変なのが入ってたり、危険な薬が混じってたり……」

 ん? 何か身体が変だな。
 一松さんの語尾がどんどん小さくなっていく。
 なのに一松さんが急に大きくなっていく。

「……? ×、××××!? ××××××××? ×××××!! ××××!!」
 はて。一松さんが何を言ってるか分からん。何コレ、どうなったの?
「××、×××××!! ××××!!」

 一松さんの声が、彼らしくなくものすごく慌ててる。
 表情はもう見られない。てか足が見える。いつものサンダル。
 何だろう。身体をこすりつけたくなってくる。すりすり。

「××××!!」

 名前を呼ばれた気がした。
 なので、応えておいた。

 にゃー。

 …………

 何だか知らんが、通販の薬を飲んだら子猫になった。

 まあ、次元転送装置があるし、美少女になったし、平成生まれ昭和育ちの六つ子がいるし。

 人間が子猫になるのも、この世界ならよくあることなんだろう、多分。
 
『××××、××××ー!?』

 私たちは松野家に戻ってきて、残りの六つ子とご対面。
 私は一松さんの腕に抱えられ、ゴロゴロ。

「×××、××、××××!?」

 頭を撫でられ、何か話しかけられるけどゴロゴロ。
 一方、一松さんは薬を出して何か説明していた。
 それからさらに大騒ぎ。何人かは家の外に行ってしまう。
 一方私は、一松さんのお顔を舐めようと忙しかった。

 一松さんは、困り切って私を見下ろしていた。

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