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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第7章 派生③おそ松&チョロ松END


 …………

 そして遅ればせながら、郷土料理を堪能した。
「お腹がいっぱいです……」
 至福の思いで、チョロ松さんにもたれつつ、おまんじゅうを食べる。

 チョロ松さんは部屋の座椅子に座り、地元のガイドブックをパラパラめくりながら、
「明日はどこに行こうか。パワースポットとかが好きなら神社とか――」
 そうっすね。ここんとこ、ろくな目にあってないし。

「でも神社には興味ないですよ」
「そう? まあお土産を買ってさっさと帰ってもいいか。はい、お茶」
「ありがとうございます」
 甘味でしびれたお口に、程良い苦みが染み渡る。
「はー」

 理不尽な仕打ちに耐えていた身体も、美味しいものをお腹いっぱい食べて満足。
 うとうとして、チョロ松さんのお膝にもたれた。

「機嫌が直った? 良かった」
 チョロ松さんは目を細め、私の髪を撫でる。ゴロゴロ。
 そして、どこからかドドドドドと足音が聞こえ、おそ松さんが部屋に飛び込む。
 この世の終わりのような顔で、

「大変だ、二人ともっ!! この旅館――卓球がないんだってさっ!!」

『へー』
 私たちは冷めた顔。

「二人とも、もっとショックを受けろよ! 温泉と言えば卓球だろうっ!!」

 やっぱり昭和? 昭和のしきたりなんですか、それは?

「温泉街を探せば、どこかにあるんじゃない? 行ってくれば? 一人で」
「一人で壁と打ち合えっての!?」

 大変に爽快な光景である。しかしおそ松さん、そこではたと私に気づき、
「松奈、食べ終わった? あとチョロ松にずいぶん甘えてたみたいだけど」

 ……ゾクッ。

「おそ松さん。温泉街に行きましょうか。行ってやってもいいですよ?」
「お兄ちゃん、やっぱ行かなーい。松奈と温泉入りたーい」
 と、着替えの下着と浴衣(ゆかた)をつかむと、私の手を引っ張る。

「食べ終わったし、出歩くにも遅いし、温泉に入ろうか!」
「食べたばっかですし、夜でもやってる店はあるし、温泉は別に明日でも!」

 半分引きずられそうになりながら、チョロ松さんを見るが、

「俺と一緒に入るのは明日ね。上がったら、湯冷めしないようにちゃんと浴衣を着るんだよ」

 誰が、あんたと一緒に入りたいと言ったっ!!

 親切を装ってるようで、連戦だということを、さりげなく告知してやがるし!

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