第7章 派生③おそ松&チョロ松END
二人で声の方向を見ると、開いた車のドアから、恐怖の長男が笑っていた。
「お、お、おそ松兄……さんっ……!! 何でここに!?」
「一回去ったと見せかけて、実は戻ってましたーとか、お約束でしょ?
イチャつこうとしたら、ボコろうかなーと思ってたんだけど……」
「わっ!!」
おそ松さんは後部座席に無理やり乗り込み、チョロ松さんを蹴って車の外に。
そして瀕死のハムスターのように、プルプル震える私の頬をピタピタ叩き、
「ダメだよ、松奈~。D○卒業したって、シコ松はシコ松なんだから。からかったりしてさあ」
チョロ松さんー! 助けを求めて車外を見る。
が、チョロ松さんは、ショックを受けた顔を作っていて、
「俺をだましてたの!? ひどいよ、松奈。俺は真剣に君のことを考えて、君の願いに応えたかったのに! その気持ちをもてあそぶなんて!!」
おい。てめえ。私の言葉を『待っていた』とか言ってただろう!!
敵の変わり身の早さにガクゼンとしていると、おそ松さんは笑う。
「女の色気で俺らを分裂させるには、あと数年足りなかったかなあ」
ざーんねん、と、私の身体のラインを見下ろして言う。
いや、あなたも誇れるほどの女経験は無いでしょ。
「まあ、多少は恨まれてると思ってたけどさ」
おそ松さんは私の手を取り、間近に顔を近づける。
「でもさあ、嫌なら言えばいいだけ。旅行の話も、断れば良かっただろ?
俺らのことが嫌いなら、そう言って俺らをフレばいいだけ。
嫌なのに何で言わないの? 何でついてきたの?」
いや、断った……気がする。嫌いと言った……気もする、んだけど。
なぜかおそ松さんにジーッと見られると、気持ちがすくんで言葉が出ない。
「俺、自分の意見をハッキリ言えない子は嫌い」
耳元で『嫌い』と言われ、なぜか私の心がビクッとする。
確かに、嫌なら逃げれば良かった。私のせいだ。
「……ご……ごめんなさい」
「何言ってるか、聞こえませーん」
「ごめん、なさいっ」
「自分が悪いって認める?」
「は、はい!」
「俺たちをケンカさせようとか、変なことはもう考えない?」
「はい!」