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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第7章 派生③おそ松&チョロ松END



「でさ。この前、にゃーちゃんのライブで――」
 私はチョロ松さんの会話を聞き流し、高速道路の車の流れをぼんやりと眺める。
 車のラジオからは競馬の実況。
 おそ松さんは馬券を買ってもいないのに、勝敗に一喜一憂。

「あー! こんなときに限って大当たりかよ! やっぱ行っておくんだったっ!!」
 するとチョロ松さんが、すかさず冷たい声で、
「別に僕らは二人だけで行っても良かったけど? ね、松奈」
 うるさい。話しかけるな。こりずに手を握るな。
 あー、また罪悪感。この世から消え去りたい。 

「松奈、さっきから静かだけど、どうしたの? トイレ? 車酔い?
 お腹が空いた? お菓子を食べる?」
 チョロ松さんが心配そうに聞いてくる。私は元恋人のように陰鬱な顔で、
「ちょっと死にたくなってました」

「ふーん、そうなんだ。ええとアメとガムとスルメとチータラとかりんとう、どれが良い?」
 流された感!! そしてラインナップが微妙だ!!
 かりんとうをボソボソ食っていると、おそ松さんが、

「サービスエリアまで、もうちょっとだからさ。そこでメシ食おうぜ。次は運転代われよ、チョロ松」
「はいはい」
 でもおそ松さんは運転が嫌いではないようで、ご機嫌だ。

「いやあ、彼女と旅行するならオフの平日だよなあ。高速も空いてるし」
 クソニートめ。働いている人たちに謝れ。

「浴衣(ゆかた)を着た松奈が楽しみだよ」
「小さいけど個室露天風呂がある部屋を取ったんだ。ホント、楽しみだね」

 意味ありげに笑うクズ二人。
 当日に部屋が取れるような宿だ。期待はすまい。

 何で私、こんなクソな旅行に来てるんだろう。
 むろん、誘われたときは猛烈に拒否りましたとも。
 枕を叩きつけて叫んだものだ。

『嫌です! 絶対に行きたくないです! てか、あんたら二人とも嫌いだから!!』

 しょせんはニート。いつまでも怖がっていると思うなよ。

 だが。

『行こう、松奈』

 おそ松さんの目に、逆らえない何かを感じた。
 気がついたら車に乗せられ、残りの六つ子に見送られ、旅行に出てしまった。

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