第7章 派生③おそ松&チョロ松END
ニートであることの利点。
思い立ったが旅行出発日。
…………
死にたい。
いや、死にたくはないが、消え去りたい。
私は真っ昼間から、鬱モードまっしぐらである。
横ではパンフを持ったチョロ松さんが、
「だからおそ松兄さんは計画性が無さすぎるんだよ。
こういうのは事前にプランをちゃんと立てて、良い宿をトド松に探してもらって――」
「プランを立てる段階で、旅行に行った気分になって、毎回先延ばしにしてるチョロ君に言われたくありませーん。それに思い立ったが吉日って言うでしょー?」
『ね、松奈ー?』と話をふられるが、私はガン無視。
殺風景な高速道路の防音壁を見ている。
そう、私たち三人は今、車で高速を走っている。
現在のドライバーはおそ松さん。
二人とも免許持ちだそうで、今はチョロ松さんと交代で運転してる。
旅行である、旅行。三人で。
クソ長兄曰く『三人で恋人になった記念旅行』。
字面からはみ出る猛烈な違和感。私一人が不幸になるオチしか見えねえ。
しかしおそ松さんもチョロ松さんも楽しそう。
「温泉なんて楽しみだよね。松奈、卓球って好き?」
わざわざ遠出して温泉につかって卓球とか、中年のオッサンか!!
しかしこう、旅行って言ったら普通、遊園地とかイルミネーションとかアルパカとかカピバラとか蔵王キツネ村をチョイスするでしょう!……普通じゃないかも?
でもカピバラとなら、喜んで一緒に温泉につかるのになあ。
「松奈?」
カピバラと温泉につかるファンタジーに意識を飛ばしていると、チョロ松さんがさりげなーく、私の手を握ってくる。
私が何も反応しないでいると、手を離して今度は膝をさわさわし出した。
私は死んだ魚の目で無反応。
抵抗されないと分かると、手はゆっくりと太ももの方へ――。
「おいこら、後部座席!! 昼間のうちから盛るのは禁止だからなっ!!」
クソ長男のチェックが飛んだ。チョロ松さんは私から渋々手を離し、チッと舌打ち。
でも私には片目をつぶり『後でね』と口パク。
いや『後でね』も何も。
最近はツッコミを入れるのも疲れてきたなあ。