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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


「あ……え……?」
 何で? 何で無いの? どうして? ねえどうして?
 行きがけ、寒くてポケットに手を入れてた。
 ポケットからまた手を出すとき、出ちゃった?
 入れ方が甘くてスッと落ちちゃった?
 さらに汗が出て、
「どうしたの?」
 一松さんが戻ってきて、残りの買い物袋を持とうと――。
「松奈?」
「ちょっと忘れ物が!!」
 私は玄関を出て、一目散に商店街に駆けだして行った。

 …………

 …………

 遠くでカラスが鳴いている。
 あらゆる場所を探し回り、結局宝くじは見つからなかった。

 路地裏に力なくしゃがみこむ。
 私は路地裏の猫スポットにいた。
 野良猫たちは、にゃーにゃー鳴いて、私にエサをねだる。
 ごめんね、今、エサは無いんだ。
 シクシク泣きながら、我が身を哀れむ。

 何で、幸せというのはこの手につかみかけたとき、こぼれおちていくのか。
 一松さんよろしく、両手で膝を抱え、がっくりしていると、
「ちょっと」
 ポンッと肩に手を置かれ、ビクッとする。

「わわわわたくし、東京都赤塚区×××の×××の松野家に在住しております――」
「職質じゃないよ。俺だから」
「っ!! 一松さん!!」

 振り向くと、パーカーにジャージ、サンダル姿の一松さん。
 足下で、喜んだ猫たちがまとわりついていた。

「松奈」
 両手を広げられ、私はまっすぐに飛び込んだ。
「一松さん~」
 よしよしと背中を撫でていただけた。
「実は、大変にショッキングな事故がありまして……」

「と言いながら、俺のポケットを探らない」

 ……チッ。

 私はズザッと後じさりし、距離を取る。

 ……そう、あと宝くじを持っている可能性があるのは、一松さんのみ。

 私の天才的な演技でもって、宝くじのことは完璧に隠し通している。
 だがこの悪魔のこと。野生の勘で何かに気づいた可能性は高い。
 

「一松さん、何かを隠していますね?」
「先に隠していたの、そっちでしょ?」

 私が構えを取るが、一松さんもポケットに手を突っ込んで、いつもの猫背のまま。
 私の闘気を察したにゃんこたちが、速やかに路地裏から逃げていった。
 
「一松さん、ついに雌雄を決する時が来たようですね!!」

「何の漫画を読んだの。いいからこっち来て。ちょっと話し合おう」

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