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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い




 敵は呆れたように私を手招き。
 だが、もう闘いしか道はない。
 私の三百万のため!! 先手必勝!!

「行きますよ、一松さん!!」
 私は駆けだした!!

「あのさ。宝くじの高額換金って身分証明書と印鑑が必要って知ってる?」

 え。

 私の動きが止まった瞬間。

 一松さんのシルエットに猫耳と尻尾が――。

 ……その後の記憶が(また)少々途切れてございます。

 …………

 …………

 風は冷たく、街灯の光は寒々しい。
 私はベンチに座り、拳を握って涙をこぼす。
「腕力に負けました。なぜこの世は、女性が虐げられるように出来ているのでしょうか……」
「いや何もしてないから。ほら、飲みなよ」
 と一松さんが何かを持たせて下さる。
「はーい」
 熱々のコンポタ缶であった。
「これも」
 渡された袋の中身は中華まん!!
 一松さんも隣に座り、プシュッと缶コーヒーを開け、飲む。
 私は一松さんが見守る中、必死で肉まんを頬張った。

 吐く息が白い。時刻はすでに夜遅い。
 私たちは、公園のベンチに座っている。
 何だかんだで、路地裏から連れてこられたのだ。
 すでに親子連れも帰り、公園には人の気配がない。
 
 やがて私も食べ終わり、言葉なく座る。
 話し合うと言った割に、一松さんも何も語らない。
 そのまましばらく沈黙が続く。

 ついに私は言った。

「一松さん。宝くじをお持ちでしょう? 返して下さい」

「嫌だ」

 ……やはり即答ですか。


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