• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 瞬時に怖がる表情を作り、壁際に下がる。
 その瞬間に、六つ子が障子を開け、居間に乱入してきた。

「松奈、どうしたの!?」

 一松さんが真っ先に聞いてきた。私は恥ずかしそうな顔を作り、

「す、すみません。Gの奴が出て、つい……」

 すぐ『なーんだ』という顔になる全員。

「もう~、そんなことで大声を出さないでよ」
「ノープロブレム。子猫ちゃんが無事で何よりだ!」
「あはは。意外と可愛いところあるんだね!」
「あー、びっくりした。引退かと思った~」
「普通に新聞紙で仕留めてそうな感じなのにね」

 ……失礼なことを言っている奴もいるが。
 
「皆さん、起こしちゃってすみませんでした。お味噌汁を温めますか?」

 ……恐ろしい。我ながら恐ろしい。
 人間、テンパリが極限に達すると、どうしてこうも平静になれるのか。

「いや、もう少し寝てるよ。まだ朝の九時だし」
「ふぁ~あ。おやすみ、松奈」
「次はもう少し声をおさえてね」
 ぞろぞろと六つ子は階段を上がっていく。
 よし! 完璧っ!! 速やかに換金しに行くぞ!!

「ねえ」

「――っ!!」

 心臓が止まりそうになる。
 パジャマ姿の一松さんがいた。

「な、な、何か!?」

「何って、俺は起きるから。ご飯をよそってくれる?」

 んだとっ!? い、いや落ち着け私!! 何も気づかれていない。
 まだ何も気づかれていないからっ!!

「どうしたの? 虫が怖いなら、一緒に台所に行こうか?」
「い、いえ、大丈夫ですっ!! すぐお味噌汁を温めますね!!」
 慌ててエプロンのヒモを結び直し、台所へ行く。
 ん? 視界の端に動く物、発見っ!!

「目標捕捉!! ただちに排除します!!」
「は?」

 私は光速で動くっ!! 神のごとき動きで新聞紙を丸め、目標を猛打!!

「――やたっ!!」

 床にはケイレンするGの姿っ!! 私は額の汗をぬぐう。
 生活害虫め! お母様直伝、新聞攻撃の威力を見たか!!
 勝手口を開け、亡きがらを速やかに処分し、
「任務完了!!」
 と横ピースで一人、決めポーズ☆

 ……。

 振り向くと、呆気にとられた表情の一松さん。
 どうしたんだろう。
「あ、もしかして新聞、お読みになりますか?」
「いや……いい」
 とだけ一松さんは言って、ちゃぶ台の前に座ったのであった。
/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp