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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 ちゃぶ台の上には新聞紙。

 今日はこの家に来て、ちょうど二ヶ月目の終わりの日。

 お父様とお母様も、明日、ご旅行からお帰りになる。

 そして――。
 
 私はそーっと手を伸ばし、神棚の前に飾った『あるもの』を手に取る。

 宝くじである。

 以前、道ばたで一枚だけ拾って神棚に飾っておいたのだ。

 え? そんな話は初めて聞いた?

 一回だけ言及してる箇所があるから、探して下さいな。
 ……はっ! わ、私は何を言ってるんだ。まあいいか。

「よしっ!」

 家はきれいにした、家の前もちゃんと掃いた。朝食も準備した。
 運が良くなりそうなことは皆やった。
 私はカクカクしながらちゃぶ台の上の新聞紙を開く。

 お願いします。お願いします。私の人生、一発逆転のチャンスを……!
 どうか……どうか……!!

 あ。数字があった。特賞300万円大当たり☆

「なーんてこと、あるわけないですね。あはははは!」

 と笑って。

「……は?」

 え? もう一度新聞を見る。

 ひい、ふう……何でだろう。
 この宝くじの数字と、新聞に載ってる特賞300万の組と数字が同じだ。何でだろう。

 なぜだろう。だんだん心拍数が上がっていく。
 呼吸が激しく、新聞を持つ手が震える。
 間違いない。ちゃんと今回の宝くじだ。
『実は去年の宝くじでした☆』という定番のオチでも何でもない。
 回と組、六桁の番号。何度確認しても、全部……合ってる。
 全身が興奮で真っ赤になる。バサッと新聞紙が手から滑り落ちた。

 ……特賞三百万、大当たり……。

「ええええええええええーっ!!」

 私の巨大な悲鳴が松野家にこだまし……ほどなくして、ドタドタと階段を駆け下りる音。

「松奈っ!! どうしたの!!」
 と一松さんを始め、
「な、何だ何だ!? 何!? 強盗!? 変質者!?」
「この兄が来たからにはもう安心だぞ、マイエンジェル!!」
「松奈。今の悲鳴、何!!」
「賭博!? 八百長!? 戦力外通告!?」
「松奈、大丈夫っ!?」

 私の行動は、非情なほどに素早かった。

 宝くじを速やかにポケットにしまい、新聞を折りたたんで、元通りに置いた。

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