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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


「松奈が疲れて風邪が悪化したらね」

 鬼か!! 普通は逆でしょうっ!! 

「だから、ダメだって……あ……っ……」

 明かりの落とされた部屋に、お月様の光が差し込む。

「や、ああ……や……っ……」
「何だかんだいって、こんなにしてさ。そんなに欲しかった?」
「……このっ!……あとで……おぼえ……て……」
「はいはい。ほら、もっと腰を動かして」
 責め立てられ、シーツをつかみながら、呪いの言葉を吐いたのであった。

 …………

 …………

 パチッと目が覚め、大きく伸びをする。
 爽やかな朝。身体はすっきり調子がいい。

「よっしゃ! 今日も一日、がんばりますよ!」

 そこで、ゴホゴホと盛大に咳が出た。
 くそ、漫画やアニメみたいに一日で治るというのは、さすがに無いか。
 まだ身体が若干ダル重い。寝てるほどじゃないけど。
 私の起床を察知して、すでに起きていたお兄さん達がドヤドヤとやってきた。

「起きて大丈夫? 掃除は代わるから、家でゆっくりしてなよ」
「安心しな、子猫ちゃん。この兄が守ってやろう」
「松奈、松奈。退屈でしょ? 俺とトランプしよー!!」

 優しいお兄さんたちに気遣われ、私は幸せな気分をかみしめる。

 そこへ、そーっと部屋のふすまが開いた。
 皆が一斉にそちらに顔を向ける。

「……何か、熱っぽいんだけど……」

 一松さんが床にへたばっていた。
 鼻水を垂らし、尋常では無いレベルに紅潮したお顔の一松さん。
 やっと這ってきました、という感じでものすごくダルそうに私に、
「う、移っちゃったみたい。松奈、ちょっと看病し――」

 私は無言でふすまを閉める。

 他五人のお兄さんもすぐ笑顔に戻り、
「何か欲しい物はある?」
「お兄ちゃんが買ってきてあげるよ」
「トランプ持ってきたよー!」
「せっかくだし食べに行こうか」
「よーし、六人で出かけるぞー!!」
 笑い声がこだまする。

 優しい五人のお兄さんに囲まれ、今日も幸せな私でございました。

 …………

 南無南無南無……。

 そして。

 私は神棚に手をすりあわせてお祈りする。
 いや、無宗教だから正しい祈り方とか知らんけど。

 でも祈らないより祈った方がご利益がある気がする。

 そんな手前勝手な小市民松奈さんだった。

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