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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 …………

 呆然とへたり込んでいると、後ろから抱きしめられた。

「何、考えているの?」
「はっ!!」

 ここは研究所。例によって整理中である。
 大分片付いたので、もう少しだと思うんだけど。

「他の奴のこと、考えてない?」

 一松さんはつなぎ姿。
 私の耳元に低く呟きながら、後ろからぎゅうぎゅう抱きしめる。

「いえ、あなたのことを考えてございました」

 つい何時間か前、笑顔全開で踊り狂っていた一松さんを思い出す。
 幻覚だと処理したいのは山々だけど、私の手元には確かにチケット代の領収書が!!

「何やってんですか、あんたら兄弟!! 本っ当にろくなことにお金を使いませんね!!」
「まあトト子ちゃんは別枠だから」
「何かムカつく!!」

 後ろに肘鉄をかますと、うめく音。
 ま、まあ彼らは大人だし、トト子さんは彼らの大切な幼なじみ。
 部外者はこれ以上、余計なことを言うまい。

「それより」
 私はクルッと振り返る。お腹を押さえる一松さんに、
「一松さん、今日は休まれた方が良かったんじゃないですか? 筋肉痛、ひどいでしょ?」
「……い、いや、大丈夫……」
 と言いつつも、身体を伸ばすのがキツそうだ。
 まあ私も最初のときは大変だったし。
「休んでて下さいよ。無理にやっても返って身体を壊しますよ」
「いや……やるよ。変な夢を見たし」
 と、腕まくりし、倒れた大きなテーブルを戻しながら言う。
「夢?」
「俺、夢の中で筋肉痛で寝てたの。そうしたら他の奴らが――何でもない、とにかく最悪の夢」
 よほどの悪夢だったのか顔を歪め、舌打ちする。

「じゃあ、今日は重い物は私も一緒にやります。二人でやれば重さも半分だし」
 テーブルの反対側に回り、手をかける。
「……ん」
 一緒にやったら、すぐ終わった。

 …………

 …………

 窓の外には月が見える。
 とても静かだ。
「寒くない?」
「いえ……大丈夫です」
 そう言ったけど、一松さんは私の裸身に毛布をかけなおす。

 今日は普通のお部屋のベッドだ。
 あちこちを片付けるうち、普段は使われてないらしい泊まり用の客室を見つけたのだ。

 申し訳ない、博士。後で全て、超速洗濯機で洗います故、お許しを!

「帰らなくていいんですか? もう六時を過ぎてますけど」

 門限は六時~とか、勝手に決められてたと思うけど。
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