第2章 二ヶ月目の戦い
『あっぶねー。この家を寄生先に選んでなくて良かったー』と一瞬だけ思ってしまった。
「んじゃ手伝ってもらうざんす。もうすぐカモ……じゃない、客が来るから、それまでにグッズの陳列をして、カモが来たらチケットのモギリ、商品を売りつけるざんすよ」
こうなったらさっさと切り替えるしか無い。
「了解であります!」
「あと連中には絶っっっ対!! 自分からアルバイトを志願したって説明するざんすよ!」
「へ?」
「すぐに意味が分かるざんす!!」
イヤミ社長はプンスカと行ってしまった。
やがて聞こえる音楽と歌。それについての感想は――ノーコメント。
ぼったくり価格と言っていい関連商品を並べつつ、思い出す。
『トト子』。この名前、ごく最近、どこかで聞いたことがあるような……。
そしてドヤドヤとライブの客が階段を下りてくる。
「トト子ちゃーん! ライブ開催おめでとう! 花束買ってきたよー!!……ん?」
どこぞの長兄の声がして。
「あ」
『あ!!』
私と六つ子はしばし見つめ合った。
……その後の記憶が少しあいまいである。
『すっごく可愛いでしょ! トト子ちゃんって!!』
『だが理解者の少ない、俺と同じ孤高のアイドルなんだ』
『女の子の目から見ても可愛いよね!? 歌も最高でしょ!!』
『松奈も僕らと一緒に踊ろうよ!! 振り付けを教えてあげるから!!』
『ほら、レジなんかいいから、こっちに来てーっ!!』
気がつけば強引に参加させられていた。
たった七人しかいない会場で、人格の崩壊した連中と、同じ振り付けで踊らされ。
最後に舞台から下りてきたお魚アイドルに両手を取られ、
『ありがとう松奈ちゃん!! おそ松くんたちの妹なら、私の妹も同然だわ!!
だから次の私のライブチケット、松奈ちゃんも買っていってね!!
もちろん今日の分のチケット代も、忘れずに払ってねっ!!』
いーやーあー……。
……。
『あーあーあー、今日のチケット代でお給料と相殺ざんすねえ~。
今日はお手伝い、実にご苦労様ざんす!! ウヒョヒョヒョ!!』
詐欺師の笑い声が聞こえた気がした。