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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 一松さんは私の裸の肩を抱き寄せ、

「いいよ。自分たちの目の届く範囲で仲良くされると、どうすればいいか分からなくなるだけ。
 本当はそこまで反対されてないから」

 後でちょっとこづかれるだろうけど……とつけ加え、息を吐く。
 そして私の頬を撫で、
「もう少し寝てなよ。家事をしてライブの手伝いをして、ここの片付けまでして。
 疲れたでしょ? 今日は遅くなってもいいんだし」
「うん、ちょっとだけ……じゃ、お言葉に甘えて」

 そう言って目を閉じる。何だか変な日だったなあ。
 結局タダ働き。何も上手く行かなかったし。

 一松さんの腕枕でウトウトする。
 目を閉じていても、一松さんが私を見ているのが分かった。
 
 忙しかったけど、だんだんここの生活にも慣れ始めてる自分がいる。
 こんな風に毎日楽しく過ごして、好きな人と一緒にいて……。

 髪を撫でる暖かさを感じながら、私は夢の世界に落ちていった。


 ――いや、それ、私もニートになるだけだからっ!!

 
 …………
 
 夜も更けて。
「ただいま帰りましたーっ!!」
 両手いっぱいに無料求人誌を抱え、ガラッと松野家の玄関を開ける。
「もう何でもいいからバイトを探しますっ!! 邪魔はさせませんからね、一松さん!!」

「今から三百万とか無理でしょ。第一、こんな生活でどうやってシフトを入れるの」

 靴を脱ぎながら、面倒くさそうに一松さん。

「もうあきらめて、この家に――」
「やかましい!!」

 門限破りで兄弟からの制裁は確実。
 一松さんが拷問を受けている間に、何としても稼げるバイトを探す!
「松奈ー!!」
 お、居間のフスマが開いて、お兄さん達が上機嫌の顔を見せる。
「あ、お夕飯の用意が出来なくてすみませーん。実は一松さんと過ごしてて――」

 さあ制裁を受けるがいい! 
 だが。

「おかえりー、二人とも! 今日も仲が良いねー!」

 ……は? D○同盟が、一松さんの制裁に走らない? 
 だが兄どもはニヤけていた。

 「お兄ちゃんたちもトト子ちゃんと楽しかったよー!」

 どうも五人はライブ後、トト子さんと打ち上げをして楽しい時を過ごしたらしい。

 浮かれていて一松さんへの制裁は忘れているようだ。

「二人も来れば良かったのに。トト子ちゃん、新しいファンが増えてすごく喜んでたよ!」


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