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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



「それとあいつ、ものすごく怖いんだけど、ケンカした?」

 一松さんはまだ少し湿っていた。
「うわ! おまえ臭いよ! どぶ川で寒中水泳したみたいな臭いがするよ!?」
 鼻をつまんで嫌そうなチョロ松さん。
 一松さんは返答せず、部屋のすみで膝を抱えてこちらをにらむ。殺気がものすごい。
「せ、銭湯に行こうよ、一松兄さん!! 身体を洗わないと!」
 トド松さんが一松さんを誘う。彼はまだ負のオーラを放っていたが、
「ほら兄さん!」
 十四松さんに促され、渋々立ち上がった。
「そうだな、そろそろ行くか」
 と他の兄弟もどやどや立ち上がる。

「じゃあ松奈も早く寝なよ」

「はーい」

 ふう。無事にしのいだ。誰もいなくなった部屋でちゃぶ台から出て、一息。
 ちゃぶ台のせんべいをバリバリ食べながら首をかしげる。

 うーむ。やはり一松さんに助力を仰ぐべきか。

 ……死ぬほど図々しいが。

 でもどう考えても、あの広い研究所を小娘一人で片付けとか無理だ。
 手伝ってもらえれば片付けも進むし、一緒に過ごせるしで一石二鳥だ。

 でもなー。一松さんは、私が元の世界に帰ることに気が進まない感じだ。
 いやいや。でも本音では私のことを考えてくれているはず!
 うあ。考え事をしてたら眠くなってきた。
 謝るのは明日にして、そろそろ寝よう。

「でもその前に、布団でも敷いときますか」

 私に気を遣って一松さんを連れ出してくれたんだし。

 私はちゃぶ台や床上の物をどけ、スペースを作り、押し入れを開け、丸められた布団を出……うわ、これけっこう重い!!

 考えてみれば男六人が寝る特注品だ。

「てか、二十歳過ぎても六人同じ布団で寝るって、どれだけ仲がいいんですか」
 枕を並べ、これまた幅広すぎて重い掛け布団をかけ、よし完成。
 なぜだろう。一仕事終えた感。そして疲れた身体に、目の前に広がる布団。

「……ちょっと寝てみよっかな」

 六人分の布団に寝る機会なんて、元の世界に帰ったら一生ないだろう。
 掛け布団の下に潜り込み、中を転がったり、手足を存分に伸ばしたり。
 暖かい。ぬくぬく。しばらく転がって満足。

 よしよし、十分に堪能した。そろそろ自分の部屋に帰って寝よう。

 今日は色々と疲れたし……。

 そろそろ……寝……。

 …………
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