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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 …………

 松野家の夕飯は、まさに団らんといった雰囲気が漂っていた。
「あらあ、お父さんと旅行なんて何年ぶりかしらねえ。ありがとうねえ松奈!」
「松奈はいい娘だなあ。父さんは幸せだよ」
「いえいえ日頃お世話になっているのです。これくらい当然のことです、お父さん」

 てか福引だし。だが完璧に私の手柄扱いされている。
 私は良い娘の顔で、お母様の絶品角煮を食べる。
 ろくでもない六つ子はどこかに飲みに行き、夕飯を囲み、談笑するのは私たち三人。
 思わぬ旅行話にお二人はニコニコ。
 パートやお仕事の兼ね合いから、お二人は数日後にご出発予定となった。

「でもね、無理はしなくていいのよ。松奈はもっと遊んでいなさい」
「そうだそうだ。そんなに疲れた顔をしてるんだ。少しは遊んだ方がいい」

 え? そうかなあ?
 でも連日の重労働が、非力な身にはちょっとこたえるかも?
 このままだと、元の世界に帰るのが無理ゲーになってしまうストレスもあるし。

「ニートたちも可愛がってるし、このままずっといてくれたら――」

 と言葉を切る。口を滑らされたな、お母様。私はお味噌汁を飲む。
 お父様だけが不思議そうに、

「何言ってるんだ、母さん。松奈はずっと家にいるんだろう?」

「そうね、お父さん。でも松奈もいつかはお嫁に――」

「何ぃ!? 嫁に行くなど、父さんは許さんぞ!!」

 そして団らんが戻る。
 ニコニコと私はご飯を食べる。

 私は、この家のお客さんだ。
 
 …………

 六つ子の部屋はにぎやかである。
 今日はそんなに飲まなかったのか、割と早く帰ってきたようだ。
「へえ、熱海旅行に行くんだ。いいことしたね、松奈」
「旅か。良い響きだ……俺も旅に出るか。おまえたちもついてきたいのなら――」

「ねえねえ松奈!! 俺たちは? 俺たちの分は当てなかったの!?」

「いや旅行九人分って、どんだけ気前の良い福引なの、十四松兄さん」

「俺たちも旅行に行きたいよなあ……でさ、松奈」

「はい? どうされました? おそ松お兄さん」
 
「何でさっきからちゃぶ台の下に隠れてんの?」

「狭い場所が落ち着くのです」

 のぞき込んでくるおそ松さん。

 親指を立てると、頭を撫でて下さった。わーい。

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