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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 …………

 打って変わってゲーセンのUFOキャッチャーで、私は苦闘していた。
「くっ! このっ!! うわああ! また落ちたあー!!
 一松さん、さらなるご融資をいただければっ!!」
「まだやるの? もう買った方が安いって」
 呆れたように百円玉を渡してくる一松さん。ひったくるようにしてコイン投入。
「で、ですが、ここで引いては今までの投資の意味がっ!! せめて払った金だけでも回収しなければ!! こんな堅実な人間の発想、ギャンブルで湯水のようにお金をお使いになるあなたには、お分かりいただけないかもしれませんが!!」
「…………」

 無言で蹴りを入れてこない。DV、DV!
 とか思ってたら、アームからあっさりとぬいぐるみが落っこちる。
「うわああ! 私のぬいぐるみがぁー!!」
「ほら、行くよ」
 UFOキャッチャーの前で敗北感にしくしく泣く。
「こっそり機械を叩いたら落ちてこないですかね」
「歩く歩く」
「私のお金が~」
「いや俺の金だし」

 ズルズルと引きずられていく私であった。
 ちなみに私がもっぱらプレイし、一松さんは横で見るスタイルだ。
 一緒にFPSをやらないかと誘ってみたが、『最近のはよく分からないから』と言われた。
 やっぱり昭和? 昭和のアーケードじゃないとダメなの? 

「何やってんの? 早くガードしないと――」
「うわああああっ!!」

 格ゲーをやっていたんだった。
 敵の攻撃が華麗に決まり、画面にはGAMEOVERの字が。私はキッと、
「一松さんのせいですよ。あなたのことばかり考えて集中出来ませんでした!」
「ふーん。ごめんね」
 流された感!
 それからさらに、あちこちの台で軽く遊び……。
「…………」
 プリクラコーナーの前に来た。
 足を止める。
 クルッと振り向く。
 敵の顔がみるみる真っ青になっていく。

 恋人とプリクラコーナー☆

 その恐怖と絶望に染まった顔。
 初ラ○ホ時の動揺など一万光年は及ばない。
 処刑場の罪人。処理場の家畜。
『友達と二人組を作って』と言われたときの小学生。
 殺人鬼やモンスターに、行き止まりまで追い詰められたチンピラA。
 全ての希望は今ここに閉ざされた。
 恐れていたものがついに来た、もはや天変地異なくして逃れることは不可能。

 と言いたげな一松さんの顔をたっぷり一分半ほど楽しんだ。

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