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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



「なら、富裕層の軽薄カップルが、リゾートでパーティー中にチェーンソーで次々に惨殺される、そんな夏空のように爽やかな映画が見たいです!!」

「……。チェーンソーはちょっと」

「そうですね。やっぱ包丁とカナヅチじゃないと」

「…………」

 今度は真面目に返答したのに、一松さんは遠い空を見上げておられた。
 そしてまたしても、心当たりがありそうな顔になったのはなぜだろう。

「まあ、いつものとことゲーセンでいいか」
 希望を聞いておきながら何故!? これが『俺様』というやつなのか!?

 ちなみに今日の一松さんは紫のつなぎ姿である。
 ちゃんと靴も履いていて、いつものサンダルではない。
 デート前にファッションをダメ出しされたらしい。

『頼むからさ。パチンコに行くみたいな格好で、デートに行くのは止めてあげなよ』
『うん! あの格好でデートはないないない!! ありえない!!』
 普段からオシャレなトド松さんはともかく、十四松さんまで同意したらしいのが意外だったけど。

 私はあんまり気にしないんだけどなあ。

 しかし格下の弟二人から言われ、一松さんはいたく傷ついたらしい。

 そういうわけで、本日はつなぎスタイルである。
 ……どうキメようが、猫背の時点で色々と意味が無い気がする。

 …………

 路地裏で、私は大喜びである。
 にゃーにゃーにゃー。
 この、ビルとビルの間の寂れた場所には、ここらの猫たちが勢揃いしていた。

「これが先月産まれたやつ。こっちが最近来た新入り」
「うーわー!! 可愛いっ!!」

 一松さんが次々に猫を抱かせてくれる。
 でもご自分はすり寄る猫を適当に撫でるだけ。
 子供みたいに大はしゃぎな私をじっと見て、時々ちょっとだけ口元をゆるめていた。
 そして。
「え」
 突然肩をつかまれたかと思うと、キスをされた。
「……ん……」

 目を閉じる。手の中から猫が逃げていった。

 背中に手を回され、抱きしめられ、もう一度キス。
 猫はにゃーにゃー。

 私たちはしばらく路地裏で、のんびりした時をすごした。


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